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というわけで──
「なあなあ、佐島佐島、佐島」
今日も朝から、間中くんは私のあとをついてくる。
「なあ、考えてくれた? キューペットの件」
「ペットじゃないから。『ピット』もしくは『ピッド』だから」
「それそれ、キューピット」
もうやだ、しつこい。
でも、間中くんのほうが足が長いから、振り切るのはたぶん無理だ。それに行き先は同じ教室だし。
あれから3日──何度も断ったけど間中くんはあきらめようとしない。
「佐島しかいねーんだよ。池沢先輩と仲いいの」
そんなことない。結麻ちゃんと同じ吹奏楽部の人、うちのクラスにも何人かいるでしょ。
「でも、あいつらはこのこと知らねーし」
「打ち明けて相談してもらえば?」
「無理! 絶対無理!」
大声で否定したあと、間中くんはぽつりとつぶやいた。
「バレたら絶対笑われる。俺のキャラじゃないって」
──たしかに。
少し前、間中くんが、私に「付き合って」って言ったときのことが脳裏をよぎる。
あのときのクラスメイトたちの反応はほぼ「ありえない」って感じで、私はそれを「佐島なんかと?」って意味だと受け取った。けれど、実際はそれだけじゃなかったのかも。「間中が告白!?」とか「間中って好きな子いたの?」とか、そういうのもあったりして。
(って、流されるな私!)
「なあ、佐島──」
「ダメ、無理」
元親友の恋バナにすらうんざりしてしまった私だ。間中くんに協力できるとは思えない。
それに「一目惚れ」っていうのも気に食わない。
(そういう人、すごく多いけど)
それって、つまり結麻ちゃんの外見が好きってことでしょ?
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