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「え、ええと……」
間中くんは、慌てたように指折り数え始めた。
「ひとつめ、サッカーがうまい。ふたつめ、食うのが早い。3つめ……小学校んときのマラソン大会で2位だった! 4つめ……4つめ……」
意外だった。
間中くんなら、もっとスラスラ答えられると思っていたのに。
しかも、これまでに挙げた3つもかなり微妙だ。
(長所って呼べるところ、もっといろいろあるのに)
明るいところ。元気なところ。気さくなところ。友達が多いところ。
(誰とでも、仲良くできるところ……)
「あ、4つめ! 背が高い!」
「それ、長所っていえる?」
たまりかねて口を挟むと、間中くんは「言える」と胸を張った。
「さっき高いとこの本取れただろ? だから長所!」
「それは……」
背が高いからじゃない、間中くんが「素直」だからだよ。
あるいは「親切」。だって、背伸びをしてもとれなかった場合、たぶん図書室から脚立を持ってきてくれたでしょ。
「あっ、ラスト1コ! 声がデカい!」
それは……まあ、否定しない。
よく「挨拶の声がいい」って誉められているし。
「わかった、ありがとう。でも、どれも意味ない」
「……へ?」
「今あげてもらった5つ、結麻ちゃんにはひとつも響かないと思う」
実は、昨日それとなく結麻ちゃんに「好きな男子のタイプ」を聞いてみたんだ。そしたら──
『クールな人が好きかな。おしゃべりじゃないからクラスではそんなに目立たないけど、面白いことがあるとひっそり笑ったりしている人。あと、たまにボソッと呟くことが面白い人。そういう人が好きかな』
わかる、間中くん?
結麻ちゃんの好きなタイプと間中くんの長所、ぜんぜん被ってないの。
むしろ正反対なの。
私の指摘に、間中くんはがっかりしたように肩を落とした。
「それって、あきらめろってことじゃん」
「そこまでは言ってない」
「……へっ?」
「未来の間中くんなら、結麻ちゃんに好きになってもらえるかも」
「どういうこと? 大人の俺ならってこと?」
「そうじゃなくて! ああ、もうつまりさ!」
私は、ビシッと間中くんに人差し指を突きつけた。
「変わるの! これから! 結麻ちゃん好みの男子に!」
そうすれば、もしかしたらチャンスはあるかもしれない。
結麻ちゃんに好きになってもらえるかもしれないんだ。
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