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実践の場はすぐに訪れた。
翌日、3時限目前の休み時間。
間中くんが作戦どおり頬杖をついてぼんやりしていると、坂田くんが「ん?」と彼のそばにやってきた。
「なんだよ、マナ〜。今日はおとなしいじゃん」
「……べつに」
「いやいや、おとなしいって。なんかあった?」
「……なにも」
「うそうそ。絶対なんかあっただろ」
「ないって」
「腹減った? 宿題忘れてきた?」
「なにもない」
「わかった! 昨日サッカー部で監督に怒られたんだろ!」
「なにもないって」
さすがの迷惑スピーカーも、ここまで否定されれば引っ込むしかないらしい。
「ええと、ええと」と気まずそうに周囲を見まわしたあと、
「あっ、山ちゃん! 昨日の『つくばチャンネル』の……」
(……やった!)
撃退成功!
前回失敗したことを、間中くんはちゃんとクリアできた。坂田くんに振りまわされることなく、最後まで「クール系男子」のふりをやりきったのだ。
もちろん、だからといって今すぐ何かが変わるわけじゃない。
(でも、これを続けていれば、きっと……)
と、間中くんがくるりとこちらを振り向いた。
(あ……)
満面の笑みを浮かべてのVサイン。
バカ、誰かに見られたら全部台無しじゃん。
すぐさま頬杖のジェスチャーをして「前を向け」と指示を出す。間中くんはハッとしたように、慌てて前に向き直った。
(バカ、ほんと単純なんだから)
けど、胸の奥がちょっとそわそわしている。
うまくいって嬉しかったのは彼だけじゃない、私だって同じなのだ。
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