第3話

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 綾は、やけにモジモジしながら「あの、ええと」を繰り返している。 「……何? 何の用?」  また先生からの言付け?  それとも──面白い本を見つけた、とか?  ふわん、とささやかな期待が私のなかに芽生える。  けれども、綾が口にしたのは 「間中くん……」 「えっ?」 「トモちゃん、間中くんと仲よかった……よね?」  生まれたばかりの期待は、パチンと弾けて消えてしまった。 「たまにふたりで話してるし、廊下でふたりが一緒にいるとこ見たって子もいるし」 「……それが何?」 「あの、私、他の子に『聞いてきて』って頼まれて……トモちゃん、間中くんと付き合ってるのかなって……」 「付き合ってない」 「じゃあ、好き……とか」 「好きじゃない。ただの友達」 「……本当に?」  念押しされて、カチンときた。  よりによって綾がそれを聞くのか。 「あのさ、綾は知ってるよね? 私が恋愛とかに興味ないってこと」 「で、でも……」 「恋とかじゃない。そんなんじゃない」  私は、ただ悩み相談にのっているだけ。綾たちと一緒にしないでほしい。  苛立ちのまままくしたてると、綾はまた小さな声で「ごめんなさい」とうつむいた。 「でも、あの……あのね……」 「何?」 「もし、その……恋してるなら……また話ができるかと思って」  ──え? 「トモちゃんと、前にみたいに……話せるかなと思って」 「……」 「ごめんなさい……」  もう一度小さな声で謝って、綾は私から離れていく。  私は、どんな顔をすればいいのかわからなくて──ただ窓の外に目を向けた。
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