第3話

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 恋、恋──恋。  それは、そんなに大事なことなのだろうか。 (どうせ、いつか別れるのに?)  どんなに胸を焦がしたところで、結局は無駄になってしまうのに。 (ああ、でも……)  じゃあ、どうして私は間中くんの頼みを引き受けたんだろう。  彼の勢いに押されたから?  結麻ちゃんの内面を好きになってくれたことが嬉しかったから?  でも、もし間中くんと結麻ちゃんとうまくいったとして、ふたりはいつか結婚するのだろうか。 「……しないな」  そんなの想像できない。つまり、私たちが頑張っていることも、いつかは全部無駄になるのだ。 (なのに、どうして……)  深々とため息をついたところで、チャイムが鳴った。  本日最後の、午後4時30分のチャイム。  放課後の委員会活動はこれで終了、もちろん図書室も閉室だ。  活動日誌を書いて鍵をかけると、職員室の図書委員専用ボックスに鍵を戻した。  校舎を出ると、グラウンドからかけ声のようなものが聞こえてきた。「ファイトー、オー!」みたいな、よくあるやつ。たぶん、野球部かサッカー部だ。  正門を出ると、グラウンド沿いに小道が続いている。いつもの私なら、夕焼けに照らされたその道を、脇目も振らずに通りぬけている。  でも、今日はなんとなくグラウンドに目を向けてみた。  サッカー部は、2チームに分かれて試合をしているみたいだ。 (あれかな……12番)  間中くんは、青の「12」のゼッケンをつけている。そのそばには白の「2」番。ぴったりくっついて間中くんの動きを制限しようとしている。  味方同士でパスをまわしているなか、間中くんは何度もフィールドの空いているところに走りだそうとしている。  けれども、白の2番がきっちりついていくので、いつまでたっても間中くんはボールをもらえない。 (これか)  瞬発力がどうのって言っていたの、あの「2番」から逃げるためのものなのか。けれども、今見ている感じでは「ぜんぜんダメ」──間中くんはマークをちっとも振り切れていない。 (トレーニング、ちゃんとやっているのかな)  もしかしてサボってるんじゃないのかな。
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