8人が本棚に入れています
本棚に追加
恋、恋──恋。
それは、そんなに大事なことなのだろうか。
(どうせ、いつか別れるのに?)
どんなに胸を焦がしたところで、結局は無駄になってしまうのに。
(ああ、でも……)
じゃあ、どうして私は間中くんの頼みを引き受けたんだろう。
彼の勢いに押されたから?
結麻ちゃんの内面を好きになってくれたことが嬉しかったから?
でも、もし間中くんと結麻ちゃんとうまくいったとして、ふたりはいつか結婚するのだろうか。
「……しないな」
そんなの想像できない。つまり、私たちが頑張っていることも、いつかは全部無駄になるのだ。
(なのに、どうして……)
深々とため息をついたところで、チャイムが鳴った。
本日最後の、午後4時30分のチャイム。
放課後の委員会活動はこれで終了、もちろん図書室も閉室だ。
活動日誌を書いて鍵をかけると、職員室の図書委員専用ボックスに鍵を戻した。
校舎を出ると、グラウンドからかけ声のようなものが聞こえてきた。「ファイトー、オー!」みたいな、よくあるやつ。たぶん、野球部かサッカー部だ。
正門を出ると、グラウンド沿いに小道が続いている。いつもの私なら、夕焼けに照らされたその道を、脇目も振らずに通りぬけている。
でも、今日はなんとなくグラウンドに目を向けてみた。
サッカー部は、2チームに分かれて試合をしているみたいだ。
(あれかな……12番)
間中くんは、青の「12」のゼッケンをつけている。そのそばには白の「2」番。ぴったりくっついて間中くんの動きを制限しようとしている。
味方同士でパスをまわしているなか、間中くんは何度もフィールドの空いているところに走りだそうとしている。
けれども、白の2番がきっちりついていくので、いつまでたっても間中くんはボールをもらえない。
(これか)
瞬発力がどうのって言っていたの、あの「2番」から逃げるためのものなのか。けれども、今見ている感じでは「ぜんぜんダメ」──間中くんはマークをちっとも振り切れていない。
(トレーニング、ちゃんとやっているのかな)
もしかしてサボってるんじゃないのかな。
最初のコメントを投稿しよう!