第4話

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 こんな調子で、特訓はそのあと3日ほど続いた。  なんでそんなに時間がかかったのかって? 間中くんがテキストのセリフを噛まずに言えるようになるのに1日、クール系男子っぽい仕草に慣れるのにもう1日、テキスト以外の「クール系男子っぽい言動」ができるようになるのに、さらに1日。  でも、なにより時間がかかったのは── 「先輩、かわ……き、きれい……」 「ハイ、口をモニョモニョさせない! もっとクール系男子っぽい顔して!」 「そんなの無理! 絶対テレるって!」 「それは慣れてないからだよ。じゃあ、あと30回」 「そんなに!?」  そう、この「照れないようにする」っていうのがなかなかできなかったのだ。  何回やっても口ごもるし、すぐに赤面してしまう。ようやくうまくいっても、5秒くらいで恥ずかしがってしゃがみこんでしまう。 「あのさぁ、そろそろ慣れてほしいんですけど」 「無理……背中がぞわぞわする」 「今、相手しているのは私だよ? 結麻ちゃんじゃないんだよ? 私相手でこれなら、本番どうなると思う!?」 「うっ……わ、わかんない……」 「わかんないなら教えてあげる。このままだと! 絶対! 失敗する!」 「やだやだ、それは絶対にやだ!!!」 「だよね? じゃあ、頑張るしかないよね?」  と、まあ、こんな感じで私もかなり厳しめに指導した。  だって、早くクール系男子として進化してほしかったし、やるからにはきっちり身につけてほしかったし。 (笑顔の謎のこととか──あんまり考えたくなかったし)  そんなスパルタ指導がうまくいったのか、単にどこかのタイミングで間中くんが吹っ切れたのか。  特訓の成果は、さらに数日ほどでいい具合に花開いた。
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