第4話

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 新たな疑問を抱えたまま、週末が過ぎて、新しい週が訪れた。  その間、サッカー部は新人戦の地区大会で見事優勝して、県大会出場を決めたらしい。 「間中くん、カッコよかったね!」 「1年生なのに2点も取ったもんね!」  これは、決勝戦の応援にいったらしい吹奏楽部の子たちの会話。ということは、結麻ちゃんの前で間中くんはゴールを決めたわけだ。 (すごいな、絶好調じゃん)  なのに、なんかおかしい。  例のごとく、坂田くんに「マナすげーじゃん!」って絡まれても、あまり嬉しそうじゃない。  ううん──いちおう、笑ってはいるんだ。でも、その笑顔がどこかぼんやりしているっていうか。いつもの、パアッて花開くような力強さがどうしても感じられない。  なので、書庫で顔を合わせたときに訊いてみた。 「なにかあった?」 「……へ?」 「最近の間中くん、なんかへんだよ。もしかして悩み事でもあったりする?」  私の問いかけに、間中くんはビクッと背中を揺らした。  ああ、わかりやすい。図星ってわけだ。  それなのに、そこからなかなか口を開こうとしない。しばらく黙り込んで、焦らすだけ焦らしておいて、結局 「なんでもない」  いやいや、嘘じゃん!  絶対なにか悩んでるでしょ。 「私に話せないこと? それとも……」  話す必要がない、ってこと?  私の問いかけに、間中くんはどこか苦しそうな顔を見せた。  けれども、それ以上の反応はやっぱり得られなくて── 「大丈夫! ほんとなんでもないって!」  ──うわ、なんなの、その取り繕うような笑顔。  ぜんぜんちっとも間中くんらしくないのに。
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