第4話

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「それで、気づいたら熱を出して倒れていた……と」  これは、ちょっと予想外。  たしかに、間中くんの様子がおかしくなったのは、結麻ちゃんと会ったあとからだ。でも、まさかあのとき、そんなことで頭を悩ませていたなんて。 「じゃあ、ええと……私なりにアドバイスするけどさ」  まず、さっき間中くん自身も言っていたように「知ってもらうキッカケ」と「好きになってもらうキッカケ」はたぶん違う。「大きな声」の間中くんは、結麻ちゃんの興味を引くことはあっても「好きになってもらうキッカケ」にはならないはずだ。 「だから、そこは難しく考えなくていいよ。これまでどおり『クール系男子』を目指せばいいと思う」 「じゃあ、試合でゴール決めたときは?」 「それは……まあ、クール系男子っぽいリアクションすればいいんじゃない? さり気なくガッツポーズするとか、『シュート決めて当然』みたいな澄ました顔をするとか」 「それって、こんな感じ?」  間中くんが、控えめにガッツポーズしてみせる。 「うん、まあ……いいと思う」 「……え、なんか歯切れ悪くね?」 「そんなことないって!」  そう、今のリアクションなら問題ない。  ちゃんと「クール系男子」らしさを維持できるはず──  なのに、私は間中くんの大きな目を見返すことができない。  本当に? 本当にこのアドバイスでいいの?  そんな不安が、頭のどこかでチラチラして── 「……っ」  ダメだ。私が自信なさげにしていたら、きっと間中くんも迷ってしまう。  今だって、不安そうに私を見ているのに。 「とにかくさ! これ以上悩むことないって!」  間中くんが目指すべきなのは「クール系男子」路線。  そこを変える必要は絶対ないはず。 「迷う気持ちもわからなくはないよ? でもさ、今までいい感じだったじゃん」  クール系男子になったことで、間中くんは今モテ期の真っ只中だ。  だから間違っていない。結麻ちゃんだって、きっと間中くんのことを好きになる。「クール系男子が好き」って言ったの、そもそも結麻ちゃんなんだし。  なのに、間中くんはジッと私を見ている。まるで私の本心を探るみたいに。  ドッドッドッて胸の鼓動が速くなる。  苦しい。  でも、ここで私が迷ったり不安そうな顔をしたら絶対にダメだ。 「──わかった」  ようやく、間中くんは口を開いた。 「じゃあ、俺もこれまでどおり頑張る。ふたりでやってきたことだもんな」  間中くんの口が、笑う形になった。  そのとたん、私のなかで何かがパチンと弾けた。 (嫌だ!)  やっぱりこんなのダメだ。こんな頼りなさそうな笑顔で「がんばる」って何かおかしい。  こんなの、私の知ってる間中くんじゃない。 「ごめん……やっぱりやめよう」  気がついたら、勝手に口が動いていた。 「元に戻そう。作戦変更しよう」 「……へっ」 「クール系男子作戦、もうやめよう」
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