8人が本棚に入れています
本棚に追加
新たな謎にモヤモヤしたまま、私は書庫をあとにした。
一方、隣を歩く間中くんはずいぶんと足取りが軽そうだ。
「なあなあ、クール系をやめるってことはさ、ゴール決まったときもふつうにしてていんだよな?」
「もちろん。叫ぶなり、派手にガッツポーズするなり好きにしなよ」
「わかった! じゃあ、今度決めたらバク転する!」
いや、なにもそこまでは──まあ、好きにすればいいけど。
「そういえば、新人戦の決勝戦、勝ったんだってね」
「おう! 来月県大会!」
「吹奏楽部はまた応援に行くの?」
「それが、なんか無理みたいなんだよなぁ。日曜日に試合があるの、2回戦と決勝戦なんだけど、決勝は文化祭の2日目とかぶってるし、定期演奏会の練習もあるから2回戦の応援もたぶん無理って」
そういえば、今年の定期演奏会は会場の都合で2ヶ月遅いんだっけ。それで3年生の引退がのびたって結麻ちゃんが言っていたような。
「まあ、いいけどさ。地区予選のとき、俺のゴール見てもらえたし」
「実は気づいていなかったりして」
「えっ」
「うそうそ。冗談だよ」
笑いながら否定すると、間中くんは少し首を傾げて足を止めた。
──え、なに?
なんでそんなまじめな顔して、私のことをジッと見てるの?
答えがわからずソワソワしていると、間中くんは「うん」と大きくうなずいた。
「俺も好き」
「……えっ」
「お前が笑ってるとこ、俺も好き」
言いたいことを言えて満足したのか、間中くんはまた軽い足取りで歩き出す。
でも、私は──すぐに動き出すことができなくて。
「佐島? なにしてんの?」
振り向いた彼は、不思議そうな顔をしている。
私の心臓が早鐘のように響いていることに、きっとこれっぽっちも気づいていない。
というか──
(なんでこんなに動揺してるの?)
この反応はなに?
どうして私、こんなにドキドキしているんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!