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その答えを見つけられないまま、次の「作戦会議」の日が訪れた。
「あのさ、再来週の日曜日ってヒマ?」
「時間帯にもよるけど。いつ?」
「午後2時! 県大会の2回戦!」
間中くんいわく、日曜日に2回戦が行われるらしい。
「金曜日の1回戦はたぶん勝てる……つーか絶対に勝つ! だからさ、試合観にこない?」
私が? 間中くんの試合を?
驚きすぎて、すぐには返事ができなかった。
だって、誰かに「試合を観にきて」なんて誘われたの、初めてだ。
「ええと……場所は?」
「中央公園んとこのサッカー場」
「へぇ、けっこう近いね」
「だろ? あそこでやるの2回戦までなんだけどさ」
ちなみに、3回戦以降は会場が遠くなるらしい。特に準決勝と決勝は、電車で片道90分のサッカー場で行われるのだとか。
「まあ、いいよ。中央公園のところなら」
うちから自転車で15分くらいだし、間中くんのトレーニングの成果も気になるし。
(せっかく、誘ってくれたわけだし)
私の返答に、間中くんは嬉しそうに目を輝かせた。
「ほんと? 絶対来るよな?」
「行くってば。……1回戦に勝てたらだけど」
「そこは大丈夫。俺、超がんばるから! それでさ……」
パチン、と間中くんは手を合わせた。
「頼む! 池沢先輩にも声かけて!」
「……」
「このとおり、一生のおねがい!」
──なるほど、そういうことか。
そうだよね、間中くんは結麻ちゃんに観てほしいんだもんね。
私じゃないんだもんね。
そんなのわかってたけど、なんか──なんか……
「……佐島?」
うかがうような声音に、我に返る。
間中くんは、いつになく不安そうな顔で私を見ている。
「わかった、結麻ちゃんにも声かけてみるよ」
「そっか、サンキュ!」
間中くんの目元が、ようやくホッとしたように緩んだ。
バカだな。まだOKもらったわけじゃないのに、なんでそんなに嬉しそうなんだろう。
意地の悪い考えが脳裏をよぎって、私は慌てて頭を振った。
ダメだ、そんなこと考えるな。
私は、間中くんの協力者なんだ。
「おねがいってそれだけ?」
できるだけ普段どおりの口調で訊ねると、意外にも間中くんは「実はもう1個」って言いだした。
「いいよ。どんなこと?」
「ええと……その、昨日からずっと考えてたんけど……」
どうしたんだろう。こんなにモジモジしている間中くんを見るのは、久しぶりだ。
(なんか……嫌な予感……)
ひそかに身構えていると、ようやく間中くんは顔をあげた。
「俺、文化祭のとき、池沢先輩に告白したい! だから相談にのってほしい!」
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