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間中くんは、何か言いたげに口を開いた。
でも閉じて、また開いて、またキュッとつぐんで。
ようやく心を決めたように立ちあがった。
「佐島……あのさ!」
うわ、なんだか嫌な予感。
「あのさ、あの……今日の、あの……あのさ……」
ウザいな。
それに、さっきから「あの」って言い過ぎ。
「あの、つまり……だから、あの……」
「結麻ちゃんのこと?」
面倒だったので、サクッと訊ねた。
間中くんは「へっ」と間の抜けたような声をあげた。
「違……ええと、そうじゃなくて……」
「じゃあ、なに」
「それは、その……」
「……」
「その……」
(……ダメだ、面倒くさすぎる)
盛大なため息をあえて飲み込むと、私は鞄に手をのばした。
中からとりだしたのは、電源の入っていないスマホ。中学校に入学してすぐに買ってもらったものだけど、ほとんど使っていないから5ヶ月経った今もピカピカだ。
「あ、結麻ちゃん? 私、友香」
受話口に話しかけると、間中くんの眉がぴくんと跳ねた。
「おすすめの本だけど、実はもう一冊あるんだ。──うん、うん。じゃあ、明日の昼休み、また図書室に来てね。約束ね。バイバーイ」
さて──と。
「間中くん、用件は?」
「やっぱりいい! じゃあな!」
弾むような足取りで、間中くんは自分の席に戻っていく。
バカめ。放課後までスマホの使用は禁止、って生徒手帳にも書いてあるのに。
(ほんと単純すぎでしょ)
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