第2話

3/13
前へ
/74ページ
次へ
 間中くんは、何か言いたげに口を開いた。  でも閉じて、また開いて、またキュッとつぐんで。  ようやく心を決めたように立ちあがった。 「佐島……あのさ!」  うわ、なんだか嫌な予感。 「あのさ、あの……今日の、あの……あのさ……」  ウザいな。  それに、さっきから「あの」って言い過ぎ。 「あの、つまり……だから、あの……」 「結麻ちゃんのこと?」  面倒だったので、サクッと訊ねた。  間中くんは「へっ」と間の抜けたような声をあげた。 「違……ええと、そうじゃなくて……」 「じゃあ、なに」 「それは、その……」 「……」 「その……」 (……ダメだ、面倒くさすぎる)  盛大なため息をあえて飲み込むと、私は鞄に手をのばした。  中からとりだしたのは、電源の入っていないスマホ。中学校に入学してすぐに買ってもらったものだけど、ほとんど使っていないから5ヶ月経った今もピカピカだ。 「あ、結麻ちゃん? 私、友香」  受話口に話しかけると、間中くんの眉がぴくんと跳ねた。 「おすすめの本だけど、実はもう一冊あるんだ。──うん、うん。じゃあ、明日の昼休み、また図書室に来てね。約束ね。バイバーイ」  さて──と。 「間中くん、用件は?」 「やっぱりいい! じゃあな!」  弾むような足取りで、間中くんは自分の席に戻っていく。  バカめ。放課後までスマホの使用は禁止、って生徒手帳にも書いてあるのに。 (ほんと単純すぎでしょ)
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加