優しい姉

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姉を失ってから私は悲しみをさらにバドミントンのラケットにぶつけるようになっていった。 私はよく姉が、 「全国高等学校バドミントン選手権大会の全国大会で優勝するのが夢だよ!」 と言っていたことを思い浮かべながら練習に励んでいた。 いつも近くにいてくれた姉がいなくなって、私は寂しくて深い孤独も感じていた。 同じクラスの友達や女子バドミントン部の部員は、姉を失ってからの私の気持ちの変わりように驚いているようだった。 今までの私は比較的陽気だったのに、姉を失ってからの私は笑うことがなくなり暗い表情をしていることが多かったのではないかと思う。 私は部活に集中するようになって、いつしか姉の夢が自分自身の夢のようになっていくような不思議な感覚を覚えるようになって、まるで姉が私に乗り移ったように感じることが多くなっていた。 春に3年生に進級して私はなりふり構わず部活の練習に励んで、女子バドミントン部から女子シングルスの代表選手に選ばれて7月下旬に開催される全国高等学校バドミントン選手権大会の静岡県予選に出場した。 私は自分でも思っていた以上に対戦相手の選手を圧倒して、この大会で危なげない試合展開で優勝することができた。 そして8月上旬に開催される全国高等学校バドミントン選手権大会の全国大会に出場し、危なげない試合展開で1回戦から4回戦を勝ち抜いてベスト8に入り、準々決勝で勝ってベスト4、準決勝で勝って決勝進出となった。 ここまでの試合は無我夢中で、緊張する間もなく試合に臨んで勝利することができた。 しかし決勝戦直前、選手控室にいた私は極度の孤独感と緊張感に襲われていた。 私は自分自身の心の中で、 (お姉ちゃんのために夢を絶対に叶えるんだ!) と言い聞かせれば言い聞かせるほど、さらに孤独感と緊張感が強くなり、手が震えはじめてしまった。 (どうしよう、お姉ちゃん助けて…) 私は藁にもすがりたい思いで、姉に助けを求めた。 私が目をつむって落ち着こうとしている時、私は誰かに声をかけられたような気がした。 ふと目を開けてみると辺りは真っ暗で、青白くぼーっとした光の中から姉の姿が現れた。
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