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『信じているの?』
そう言ってあなたは柳眉を寄せる。
「ハルカがわたしを求めてくれるということは、ハルカが危ぶむ封印を留めおくのに役立っているということなの。こんなわたしが、誰かの為に生きられるなんて」
わたしはうっとりとした心持で答えた。
『あの大人たちが、色々と吹き込んでいるよ、きっと。どんなに不平等な世界でも、終焉だけは平等に訪れるから』
あなたは、わたし自身の抱く“恐れ”の投影なのだと気が付いた。
※
※
「伽耶、どう、居心地は?」
そう言ってわたしの手を握る。
「煩わしいことを考えなくていいし、それにハルカだけを、ただ待っていられると言う日常は、とっても気に入っているよ」と言ったら、
「嬉しい。だって親友だものね」と笑った。
わたしだけが、ハルカの中の澱のように滞る悲しみをはらすことが出来る。この笑顔は、わたしの存在証明だ。
「ハルカ、いつでも会いに来て。わたしはあなたを楽にしてあげられる。あなただけのために此処にいる。忘れないでね」
そう言ってハルカの手を強く握り返す。
わたしは、この愛すべき退屈な日常の、まだ続きを望めると言う事が心底嬉しかったのだ。
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