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「とっても面白いでしょう?パパ」と言ったら、父は眉間にしわを寄せとても険しい表情をした。
父から溢れる嫌悪の念を、わたしは幼いながらはっきりと感じとったのだ。そして思った。こういう事は人に話しても、わたしと同じ心持にはならないということ、また人に同意を求めてはいけないということ、そして父は、わたしの存在を否定する者なのだということを。
それから暫くして、家に家庭教師が呼ばれた。わたしはもう一人で出歩くことはなくなった。だからといって、わたしの性質が変わったわけではなかったが。
またある日、たまたま父がいて、なぜだか家の電話から部下?に指示を出しているのを聞いてしまった。
「……補足対象だと思われる……異常な……」
父は絞り出すような声でそう言った。
当時、父は警察官で、青少年に関わる犯罪を捜査する部署にいた。
やはり父はわたしを否定するのだ。
そして、周りの大人たちの、わたしに対する評価は“変わった子”であり“異常な子ども”なのだと気が付いた。
※
※
『この胡乱であやふやなあなたの世界で、生きていくのは辛くはないの?』
あなたは、探るような面持ちで言った。
「この世界は空白だらけだ。わたしが見ている全てがわたしの思い込みの反映ならば、辛いとか辛くないとかの感情は意味をなさないと思った」
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