夏の汗っかき女子の事情

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夏の汗っかき女子の事情

私は夏が嫌い。 だからと言って、冬が好きなわけでは無い。 なぜなら私、土井友香(ともか)は物凄い汗っかきなのだ。 女子高生なのに、頭にタオルを巻いて登下校をしたいくらい。 最低でも常時、手を拭く用と汗を拭く用の2枚のタオルを持っている。 夏はサラサラの自慢の髪をポニーテールにしたり、シニヨンにして纏めている。 夏に髪を下ろして過ごすなんて、私にとっては苦行なのだ。 夏に髪を下ろして過ごす女子が羨ましいし、妬ましい。 私は高校から帰ると、汗びっしょりでシャワーを浴びたのかという位の惨めな姿になっているのに。 それに汗をかき過ぎるので、かえって身体が寒くなってしまう。 私にどうしろと言うのだ。 更に言うと冬だからと言って、汗をかかない訳ではない。 冬だとしても、暖房のきいた電車に乗ると汗が吹き出てくる。 要するに私の汗っかきは、1年中という事なのだ。 それでも、あまり汗のかかない冬が待ち遠しい。 そんな私も恋をしている。 同じ高校で水泳部の部長をしている原田慎。 日焼けした肌。 鍛え上げられた肉体。 短い黒髪。 真夏に愛されているような彼。 私は原田君が好き。 私の止められない恋心と汗。 私は冬になったら、この想いを打ち明けようかと考え始めている。 冬ならまだ、汗をかかない対策が出来るから。 だって、夏だと恥ずかしい。 汗をびっしょりかいて、告白なんて。 まるで、罰ゲームのよう。
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