プロローグ

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プロローグ

 0ー1 人生100年時代でしょ!  「てめえら皆、地獄へ落ちやがれ!」  おもいっきり蹴飛ばした小石が思いの外重くって爪先がぐきっと音をたててきしみわたしは、顔を歪めてその場に踞った。  「くぅっ!」  目尻に涙がにじむ。  それは、昔の職場の同僚とのランチの帰り道でのこと。  さんざん彼女の孫自慢に付き合わされたわたしは、少し、いや、かなりイラついていた。  というか。  なんか、ショック状態だったのだ。  はぁ?  なんでわたしと同い年のあんたが孫自慢なんかしてるわけ?  わたしたち、まだ、37才だよ?  なんで、孫なわけ?  まあね。  バブルの時代に若かりし頃をすごしたわたしは、いわゆる腐女子だったことも手伝ってなかなかいいご縁にめぐまれなかったけどね。  だからって、孫はねぇだろ!  孫っていうのは、赤いチャンチャンコだかなんだかを着る頃の話じゃね?  どんだけ生き急いでいるんだよ!  「はあぁ」  わたしは、うつむいてため息をついた。  確かに最近気にはなっていたんだ。  職場も、あっ、わたしは、つまんない田舎町のつまんない老人ホームで介護の仕事をしてるんだけど、主任以外は、だいたいがわたしよりも年下になってきてるなぁって思っていたんだ。  でもね。  まだまだアラフォーだし。  今や人生100年時代だしな。  なんで人生の折り返し前におばあちゃんにならなきゃいけないわけ?  不意にわたしの脳裏をかつて付き合い、そして、お別れしてきた男たちの顔がよぎっていった。  といっても2人だけだけどな。  1人目は、高校の時に付き合った高橋くん。  わたしが入部していた美術部のお隣の部室だった科学同好会の部長だった。  メガネが似合うちょっと素敵な人だったっけ。  放課後、体育館の裏でペットボトルのロケットを飛ばして見せてくれた。  2人目は、短大時代に付き合ったメガネのリーマンの内田さん。  年上の魅力とか思ってたんだけど、転勤しちゃって自然消滅。そして、1年後には、手紙が届いたんだ。  『結婚しました』  それからもうすでに10年以上。  気がつけばわたしは、男っ気のない生活を送っているわけだけど。    
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