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【 8月20日 】
僕が見ていたのは、夏ちゃんの幻想か。
いや、確かに彼女を感じた。彼女に触れられた。
幽霊でも、幻覚でもない。紛れもない、あれは夏ちゃんだった。
海の見える公園の五つあるベンチの真ん中に力なく座る。
いつも彼女とここで話した。
僕の隣でいつもかわいらしく笑っていた。
「な、夏ちゃん……。君は、幽霊なのか……。いや、幽霊でもいい。何でもいい。夏ちゃん、君にもう一度会いたい。会いたいよ……」
ベンチに座る僕は、両手で頭を抱えながら、涙が止まらなかった。
ポツポツ、ポツポツと地面へと零れ落ちてゆく。
その涙の染みが、色を濃くして広がっていった。
今日は、夏ちゃんと約束した8月20日。
もし、神様がいるのなら、願いを叶えて欲しい。
『カラン、カラン』
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