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【 同じ 】
土砂降りの雨の中、車まで走って行き、急いで彼女の待つ自転車置き場まで車を走らせた。
助手席側のウィンドウを開け、その少女に声をかける。
「ちょっと狭いけど、助手席に乗って」
「は、はい……」
彼女は、恥ずかしそうにしながらも僕の車へ乗り込む。
「家はどこなの?」
「あっ、港町二丁目の港医大病院の近くです」
「あっ、そうなんだ。僕の家の近くだね。それは丁度良かった。ひょっとして君、港中学の子?」
「あっ、はい。そうです」
車を走らせると、彼女は少し頬をピンク色に染めて緊張気味にスカートを握りしめている。
「そうなんだ。実は、僕もその港中学の卒業生なんだ。今は君の家の近くの港医大で大学生してる」
「同じ港中学……」
「そう。確かに港中学は厳しいから、知らない人の車に乗っちゃダメって校則にありそうだね」
「はい、生徒手帳に書いてあります」
「今日2度会ってるし、同じ中学の先輩、後輩だから、もう完全に知らない人じゃないよね。あはは」
「うふふっ、そうですね……」
彼女は俯き加減で、恥ずかしそうに口元へ手をやりながら小さく笑った。
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