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【 またね 】
その「またね」は、すぐに訪れた。
彼女に会えるかもとは思っていたが、次の日の日曜日の朝にこの海が見える公園へ来て驚いた。
海を眺める特等席のベンチ。五つある内のど真ん中に、白い小さなお花の髪飾りを付けた栗色のショートヘア―の彼女が座っている。
何やら書き物をしているようだ。少し手前、十メートルくらいの所から声をかけた。
「夏ちゃん」
笑いながら手を振ると、彼女は顔を上げビックリして手帳のようなものをパタリと閉じた。
「あっ、光さん」
「また会ったね。昨日はスマホ拾ってくれてありがとう」
「いいえ、こちらこそ家まで送ってくれてありがとうございました」
彼女の座っている横に座ると、彼女は深々と僕に頭を下げた。
「今日は昨日と違って天気がいいね」
「はい、だからまたここへ来ちゃいました」
彼女は小さな手帳を胸に抱えながら、恥ずかしそうに答える。
「この場所好きなの?」
「はい、私のお気に入りの場所です」
「そうなんだ。僕もここは大好きでよく来るんだ。景色はいいし、風も気持ちいいし、夏は小さな砂浜があるから海の冷たい水も気持ちいいしね」
「はい、私も小さい頃からよくここへ来ていました」
今日の彼女の洋服は、上下水色で統一された可愛らしいオシャレ着のよう。
胸にはパステルブルーの大きなリボンが付いており、スカートの端からもかわいらしい白い花柄のレースが覗く。
「何を書いていたの? 日記?」
「そ、それは、光さんには言えません……」
彼女はなぜだか急に顔を真っ赤にして、その手帳らしき物で顔をかわいらしく隠した。
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