【 またね 】

1/1
前へ
/16ページ
次へ

【 またね 】

 その「またね」は、すぐに訪れた。  彼女に会えるかもとは思っていたが、次の日の日曜日の朝にこの海が見える公園へ来て驚いた。  海を眺める特等席のベンチ。五つある内のど真ん中に、白い小さなお花の髪飾りを付けた栗色のショートヘア―の彼女が座っている。  何やら書き物をしているようだ。少し手前、十メートルくらいの所から声をかけた。 「(なっ)ちゃん」  笑いながら手を振ると、彼女は顔を上げビックリして手帳のようなものをパタリと閉じた。 「あっ、(ひかる)さん」 「また会ったね。昨日はスマホ拾ってくれてありがとう」 「いいえ、こちらこそ家まで送ってくれてありがとうございました」  彼女の座っている横に座ると、彼女は深々と僕に頭を下げた。 「今日は昨日と違って天気がいいね」 「はい、だからまたここへ来ちゃいました」  彼女は小さな手帳を胸に抱えながら、恥ずかしそうに答える。 「この場所好きなの?」 「はい、私のお気に入りの場所です」 「そうなんだ。僕もここは大好きでよく来るんだ。景色はいいし、風も気持ちいいし、夏は小さな砂浜があるから海の冷たい水も気持ちいいしね」 「はい、私も小さい頃からよくここへ来ていました」  今日の彼女の洋服は、上下水色で統一された可愛らしいオシャレ着のよう。  胸にはパステルブルーの大きなリボンが付いており、スカートの端からもかわいらしい白い花柄のレースが覗く。 「何を書いていたの? 日記?」 「そ、それは、光さんには言えません……」  彼女はなぜだか急に顔を真っ赤にして、その手帳らしき物で顔をかわいらしく隠した。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加