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【 夏ちゃんの手帳 】
「ねぇ、夏ちゃん。その書き物が一段落ついたら、海に足だけ浸かりに行かない?」
「えっ? 海にですか?」
ひょこっと、その手帳の上から、覗くように大きなブラウンの瞳を僕に向けた。
「うん、海に。今日は暑いから、気持ちいいと思うよ。どう? 行かない?」
「は、はい。もう、書き物終わったので、行きます!」
急に彼女は顔の前にあった手帳を膝の上に置くと、僕に元気よくそう言った。
「あはは、じゃあ、行っちゃう?」
「はい! 行っちゃいます♪」
すぐ近くの小さな砂浜まで行くと、靴を脱ぎ裸足になり、ふたりで穏やかな波のある海に足をつけた。
「きゃっ、冷たい」
「あはは、ちょっと冷たいけど、気持ちいいね」
彼女のその仕草がとても眩しく見えた。丈の短いパステルブルーのスカートから覗く少しピンクがかった白い足は、僕には眩し過ぎる。
まだ彼女は中学生だけど、とても女性らしく、そして何よりかわいらしい。
「少しこの冷たさに、慣れてきました」
「うん、慣れると気持ちいいね。足首まで浸かるともっと気持ちいいよ」
そう言うと、彼女は僕の入っているところまでゆっくりと歩いてくる。
すると、急に少し大きな波がやってきた。
『ザバ~ッ』
「きゃーっ!」
波は一気に膝上まで到達した。僕の履いていた五分丈の青いズボンも濡れてその色を濃くする。
と、そんなことより、僕の胸の中にあるこのやわらかくて、いい香りのする温かいものは何だ?
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