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定期テストも間近に迫り、クラス全体がピリついている、そんな時期。
夕方、周りがみんな帰ってしまい、私はクラスメイトの男の子と二人きりだった。
周りの人よりちょっぴり大人びていて、ちょっと気になる、そんな存在だった。
「く、暗くなっちゃったね〜」なんて、声をかけてみる。
一瞬きょとんとした顔をして、「ああ、そうだね。」なんて返される。
一瞬で会話が終わってしまい、慌てて窓に目をやると、
そこには少し気不味い顔をしている私と、優しく笑う彼の顔が、そこにはあった。
(…やばい、好きになっちゃったかもしれない。)
自分でも驚くほど単純だった。でも、落ちちゃったんだから仕方がない。
そこからは一直線だった。
それから定期テストまで毎日、二人きりになるまで残り、一緒に帰った。
会話は、教室から正門までの、毎日経った十分だけ。
それでも嬉しくて、ときめいたりなんかしちゃって、
この日々が永遠に続けばいいのに、
定期テストなんて永遠に来なくていいのに、なんて思っていた。
明日からは定期テストが始まる。
こうやって一緒に帰ることも、できなくなってしまう。
最後の帰り道、私は勇気を出して、こう言った。
「ねえ、あのさ。…好きな人とか、いないの?」
すぐさま彼はこう言った。
「好きな人には彼氏がいて、惚気ばかり聞かされてるんだ。
僕に脈なんて、あるわけないんだ。…ごめん、こんなこと言って。」
ああ、そっか。彼にもすきな人がいるんだ。
報われない恋をしてるんだ。
(私なら、そんな顔させないのに。)
そう思ってハッとした。
私はその子じゃないのに。どうやっても成りえないのに。
だから私は。
「私にも好きな人が居て、その人にも好きな人がいるの。恋愛って、難しいね。」
そう言って、笑った。
「でも、片想いもたのしーからいいんだ!!」
さよなら、私の淡い青春。
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