11人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
緊急通報を終えると、亜美は耳にスマホを当てたまま立ち尽くした。
沙耶が通話に応じる代わりに送ってきたのは、父親との会話を録音したボイスメモだった。
視線の彼方に黒い杉林に囲まれた沙耶の自宅が見える。
空を仰ぐと黄色い光を放っていた月が雲の影に隠れようとしていた。
ぽつぽつと雨粒がアスファルトを叩き始める。すぐにでも本降りになりそうだった。
トレーナーのフードを深く被る。
恐怖など欠片もなかった。
ねえ沙耶、私達って量子みたいにもつれてると思わない? 運命共同体。死ぬまで一緒。
亜美はロードバイクに飛び乗ると、思い切りペダルを踏みこんだ。
END
最初のコメントを投稿しよう!