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「お金を貸してください!」
「どうしたんだよ、高橋」
仕事が終わって帰りの道で同僚の杉本さんに僕は電話で緊急だと呼び出した。人通りが少ない路地だけど、頭を下げている僕の姿は目立っていた。杉本さんがあわてて近寄り肩を叩く。
「何があったんだ、高橋。急に大きな声を出すから、俺も驚いてしまった。事情を説明してくれ」
僕はぽつりぽつりと今までの経緯を呟いた。
「それで、なんとかお金を貸してもらえませんか?」
「いや、今までの話を聞くとちょっと無理だ」
「そこをなんとか!」
「だって、おまえ、ギャンブル中毒なんだろ」
「ギャンブル中毒ではないです。ギャンブルが僕に中毒なだけです」
杉本さんは首を傾げて、眉根を寄せて露骨に怪訝な表情をした。
「意味がわからない。そんなにお金が必要なら銀行で借りたら?」
「ブラックリストに入っていて、もう借りられないんです」
「じゃあ、どっかの危ない金融屋とか」
僕は胸を張って誇らしげに笑顔で応えた。
「あらゆる金融機関からブラックリストにされているんです」
杉本さんは呆れて深いため息をついた。
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