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「ーーーこの子の父親ーーまだ学生なの…
それにーーー彼の希望で周りには付き合ってるの内緒にしてるから、誰にも相談できなくてーーー色々面倒なんだって…父母共に有名人だと」
俺の予想は確信に変わり始める。
彼女のお腹の子の父親はーーー俺の同級生だった真木柊一なんじゃないだろうか。
真木は学生の頃、彼女と同じネックレスを着けていた。
俺はアクセサリーを着けない。
もっと言うなら古臭いかもしれないが、男が結婚指輪や婚約指輪以外にアクセサリーを着けるのを良く思えない。
それで大学の頃ーーー「チャラチャラしやがって」という悪い印象で、真木のネックレスのデザインを覚えてしまっていた。
スキー部の合宿の時にネックレスの裏に『I &S』の刻印が刻まれている事まで知ってしまってーーー俺はそれから真木がなんだかキザっぽく感じてしまって、さらに苦手になってしまった。
そのネックレスはこの間SNSで見かけた時も変わってはおらず、俺は真木に本当は大学の頃から今までーーー長い事付き合っている彼女がいるんじゃ無いか思ったのだった。
「好きな人ならいるよ」
恋人がいるか聞かれた時に、真木はいつも決まり文句のようにそう言っていた。もちろん、莉子にも同じ様に言っていた。
それは彼女が先程告げたように「交際を隠している」ということにならないだろうか。
それにプラスして、俺があの飲み会の後に見かけたーーー真木と一緒に帰る女性ーーー。
彼女こそーーー…3年前の愛なのでは無いだろうか。
はっきりとは覚えていない。
でも、シルエットが、雰囲気が、声がーーー俺にそう思わせてならない。
「相手の親は?ーー知ってないの?
ーー自分の息子が…君を妊娠させた事」
俺はホットミルクを一口飲んでから尋ねた。
愛も真似して、ホットミルクに口付けた。
「知ってるーーーけど、同じ様に堕ろせって言って聞かなかった。
…息子は今が一番大事な時なんだ。
この子は親に隠れて子供を作る様な子じゃ無い。
お前が金目当てに息子に近付いて、息子を誑かしたんだろう。って」
「イカれてるな」
俺の言葉に、愛は小さく笑い肩をすくめた。
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