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それから2日後。俺は有休消化で貰った休みを使い指輪を買いに行った。 近くにある百貨店で購入しようかとも思ったが、百貨店に買い物に来たとき買った指輪がショーケースに並んでいるのも嫌だなと思った俺は、車で2時間程走った場所にある老舗のジュエリーショップへと向かった。  車を走らせている間、自分が愛と出会った日もこうやって車を走らせていたと思い返した。 あの時はもっと心が不安定でーーーもし愛があの海にいなかったら、莉子の後を追って俺が海に入っていたとしてもおかしくなかった。 俺は海をなんとなく見たくなり車を走らせたもののーーー心の奥には間違えば自分も海に入りそうな危うさがあった。 生きてきても、死んでいてもーーーもうどうでもいいとさえ思っていた。 なのに今は真木の子供を孕っているであろう愛と結婚し、愛の為に結婚指輪を買おうと車を走らせている。 あの日をきっかけに死のうとしていた俺も愛もーーーどうにか生きる事を決意し今も生活してるのが、なんだか不思議だった。 この間は悪阻の落ち着いたら愛と、足湯のある道の駅に出かけた。 妊娠の影響もあってか足が浮腫みやすいと悩んでいる愛は、足湯に入って気持ち良いとリラックスした表情を浮かべていた。 俺たちは道の駅で昼食を取り、俺は焼き魚定食で愛はハンバーグ定食を食べた。その後ソフトクリームを買おうとしたものの、愛は食べたいソフトクリームが2種類あると迷い、結局別々の味をカップで買って分け合うことになった。 俺はソフトクリームのコーンが苦手だからカップの方が良かったのだけど、愛は食べてる最中「やっぱりコーンが無いと変な感じ」とぼやいて2人で笑った。 愛との生活はこんな風に毎日が楽しく、居心地が良かった。愛は確実に俺の生活の一部となっており、莉子の死で傷ついた俺を癒してくれていた。 莉子を亡くした時は自分が天涯孤独でーーーもう自分の周りには誰もいないとさえ思ったのに、既に愛は俺にとってはなくてはならない存在になっていた。
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