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ダークグリーンとネイビーの、個性的なデザインのカーディガン。 黒い細身のジーンズに、白いスニーカー。 黒い髪に、白い肌。小さい顔。 横顔を見た瞬間、俺は思わず背を向ける。 途端に何か、見てはいけないものを見てしまったかのような感覚に襲われる。 真木だーーーーー 「来島(くるしま)さんなら、今年に入ってすぐ辞めましたよ」 自分の神経が、一気に緊張して張り詰める。 愛の旧姓は、来島(くるしま)なのだ。 「ーーー連絡付かなくて探しててーーー …どこに行ったかとか… …辞めてどうするとか…分かりませんか?」 真木の言葉に、女性の店員は困った顔をして首を捻った。 「突然辞めちゃったからね… まぁ…知ってても教えられないんだけど… …でも来島さんの事は本当に知らないの… ……ごめんなさいね」 女性店員は真木にそう告げると、頭を下げた。 「いえーーーすみませんこちらこそ突然… ーーー失礼します」 真木も直ぐに頭を下げる。 俺は真木の手元から目が離せなくなった。 真木が手にしてるスマートフォンに写るのは確かに愛の写真だったからだ。 連絡がつかなくてーーー探しててーー 俺は真木の言葉を頭の中で繰り返した。 真木の声は俺の記憶の中の声より掠れていて、聞き取りにくい。 俺は去っていく真木を横目で見た。 真木の首元にはおれの記憶通り、愛が最初出会った時に着けていたものとーーー全く同じネックレスが付けられている。 愛はあれからあのネックレスを一度もつけていないが、間違いなかった。 心臓が音を立てた。 真木は、愛を探してる。 もしこの先、真木にやり直そうなんて言われたら、愛はどうするんだろう。 そう思うと突然、不安になる。 その不安は、俺が愛を手放したく無い証拠だった。愛を真木への復讐の為だけに、自分のものにした訳では無いという証明。 莉子が死ぬ原因を作ったであろう真木が好きな愛を自分のものにしてーーー真木からも同じ様に、大切なものを奪ってやろうとーーー そんな打算的な気持ちから、愛にプロポーズをしたのではなかったのだろうか。 失うものが無い人間が一番強いと言うのは、もしかしたら本当なのかもしれない。 愛と出逢う前はこんな事思わなかったのに。 今の俺は愛を失う事を酷く恐れている。 もしかしたら俺は今ーーー莉子よりも愛を大切に思っているという事なのだろうかーーー そんなのーーー許されるはず無いーーー 俺がちゃんと…莉子の隠していた傷に気づいていたらーーー落ち込んでいた莉子に声をかけてやっていたらーーー莉子は自分で死んだりしなかったかもしれない。 莉子を忘れてーーー俺だけ幸せになるなんてそんなーーーー
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