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俺はなんだか呼吸が浅くなる感覚に襲われ、買おうとしていたファッション雑誌を手に取り会計を済ませると、逃げる様に駐車場に停めたシビックに乗り込む。
なんだか息苦しさだけじゃなくてーーー手足の指先がピリピリと痺れる感覚がするーーー
俺は直ぐ様運転席を倒して体を横たえ、目を閉じた。
真木が愛をまだ好きだとしてーーー本当に復讐する為に自分の妻にした愛の存在を真木に見せつけれるのか?
本当に真木がその後で愛を奪い取りに来たら?
それに愛もやっぱり真木が好きでーーー俺の元を自ら望んで去っていったら?
俺はその時どうする?
その程度の女だったと愛を切り捨てーーー愛と出会う前みたいに1人で生きていけるだろうか。
莉子無しでーーー1人でーーーー…
そこまで考えて、俺はあまりの気持ち悪さに前後の窓を数センチずつ開けた。
落ち着いてーーー冷静になれよーーーー
ーーー嫌がる愛に子供を堕ろせと無理矢理説得したような男をの元に…愛が戻りたいなんて思うはず無いーーーー
俺はほとんど暗示のように自分に言い聞かせ、呼吸が元に戻ったところで愛に連絡をした。
ほんの少し痺れが残る指先でスマホのロックを解除して、俺はLINEのアプリを開く。
「今から帰るよ」
そう愛にLINEをしようとして、俺は随分懐かしい人物からLINEが入っている事に気づく。
瀬尾恭平
セオキョンの愛称で慕われていた、俺の幼稚園からの幼馴染だ。
何かと思ってLINEを開くと何故か俺が卒業した大学の写真が添付されており「来ちゃった!」と書いてある。
「来ちゃった?」
そう返信をすると直ぐに既読になり「サークルの後輩達に会いに来たよー」と返事が来た。
「今久々にスキー部で飲みに行こうってなって。
光も来ない???」
俺が返事をするより早く、そうLINEが表示された。
恭平に会いたいのはやまやまだが、この調子では飲みに行くとは言えない。
それに会うなら、恭平と2人がいい。
ガヤガヤしたーーー大勢で飲むのは、昔からあんまり得意じゃ無い。
「折角だけど、今日はごめん。
奥さん妊娠中だし、また今度な」
そう返して、俺は一旦通知をオフにしてシビックのエンジンをかける。指先の痺れも呼吸の浅さもーーー恭平からのLINEで気が紛れたからかすっかり良くなっている。
飲みにいけない訳じゃ無いけどーーー指輪も買ったし、急に飲みにいくには抵抗がある。
多分愛は、夕飯だって作ってくれているはずだ。
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