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「私、絶対どこにも行かないしーーー ーーー光さんの側から離れないから」 愛は俺の目を見て、はっきりとそう告げた。 その目の真剣さに、俺は目を離せなくなる。 「だから光さんもーーー私の事ーーー ーーーその(ひと)に渡さないでーーー」 俺と愛はもう一度見つめ合い、唇を重ねた。 しばらく唇を重ねてからそれだけでは足りず、俺達は初めて愛し合った。 甘い汗をたっぷりかいた後で、俺達はすっかり冷めてしまった夕飯を食べ、その後で指輪をお互いの指にはめた。 「約束、絶対守るから」 指輪を交換した時、愛はそう微笑んだ。 俺達はこの日から一度も喧嘩する事無く、愛のお腹は日に日に大きくなっていった。 愛のお腹が大きくなりすぎないうちに、俺達は結婚写真を撮り、夏には休暇をとって、近くの観光地で旅行を楽しんだ。 ウェディングドレスを着た愛は美しく、花冠をかぶると愛は「似合う?」と何度も聞いてきた。 白いウェディングドレスと花冠を纏った愛は妖精のように愛らしく、俺はこの愛の姿を一生忘れないだろうなと思った。 俺は自分がキザっぽくなるからと避けていた白いタキシードを愛の勧めで着て、少し照れながら写真に映る羽目になった。 結婚写真を取ってから数ヶ月。 (ゆう)が産まれたのは、夏の暑さが和らぎ風がだいぶ涼しくなってきた頃だった。 お腹にいる時から悠が大きめだった事もあり、俺は勝手に悠が華奢な愛の体にそんなに長く入っていられるはずは無いから、早く産まれるだろうと予想していた。 しかしのんびり屋の悠は愛のお腹から中々出てこようとはせず、俺の予想に反して、産まれてきたのは出産予定日を2日過ぎた日だった。 「苦しんでいるところを見られるのはイヤ」 愛がそう言って立ち合い出産を拒んだ為、俺は出産に立ち合わなかった。 それでも生まれたばかりの悠を抱いた時は感動して泣いてしまい、その俺の頭を愛がベットから手を伸ばして撫でてくれた。 まだ目も見えてない筈の悠は、俺が名前を呼ぶとふぎゃあと小さい声で答え、うっすらと口元に笑みを浮かべていた。 あの海で手に入れた宝物から、宝物がもう一つ増えた瞬間だった。
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