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気づけば莉子の死から、1ヶ月が経っていた。 時間だけが残酷にも過ぎて行って、亡くなって1週間も経たないうちに、莉子は骨になり、莉子を焼いた煙は空まで登って行ってだんだんと霞んで見えなくなった。 「ーーーーー…」 昨日と一昨日は久しぶりに、涙を流さなかった。 それはもう、涙は枯れた…というより、心がもう動かなくしまったと言った方が正しい。 凍ってしまった、とでも言うような感覚。 「ーーー妹さんが何か悩んでいたとか…傷ついていたとかーーーそういう事はありませんでしたか?」 莉子の火葬を終えてから警察にそう聞かれた俺は、1つだけ思い当たる事があったが、俺はゆっくりと首を横に振った。 莉子がそんな事で死ぬなんて信じたくなかった。 「自殺でーーーもう…間違い無いんですかねーー」 質問には答えずに呟いた俺に、警察は写真を数枚、気を遣いながら見せてくれる。 「……砂浜に…靴が揃えて置かれていてね…。 貴重品も綺麗なまま残ってて…スマホの中身や…SNSのやりとりにも不審な点は無かったから…」 その時の状況を説明されると、途端に耳を塞ぎたい気持ちになった。 俺の頭にまた、あの男の顔が浮かぶ。 俺が大学入学当時から、ずっと苦手としているあの男。 「……帰ってもらってーーーいいですかーー? 申し訳ないんですけど…妹が亡くなる原因には…僕も心当たりがありません… 悪いですけど……今日はもう、お引き取りくださいーーーー」 俺はそう言って頭を下げた。 警察が帰ってから、俺は莉子が亡くなった時に持っていた鞄を開けた。 どうしてそんな事今更しているのか、自分でも分からなかった。妹と言えど、莉子の鞄の中なんて見たことは無い。 でも既に莉子は亡くなっていて、開けても「やめてよ!気持ち悪い!」と、以前の様に叱ってはくれない。 それにこの鞄を開けることでーーー何か分かることがあるかもしれないーーーー 俺は莉子の死の真相を知りたいような、知りたく無い様な、そんな気持ちで莉子が最後に持っていたショルダーバッグのジッパーを開けた。 手が惨めにも震え、自分で自分を臆病者だなと思って呆れてしまう。
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