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薄暗い灯りの中で、目が覚めた。
雨が降っていて蒸し暑かったと言うのに、部屋の中はクーラーが効いているのか、快適な温度が保たれていた。
頭のすぐ横のテーブルの上にミネラルウォーターが置かれていて、ミネラルウォーターの横に牛の絵とコーヒーカップらしき物が描かれた紙が置いてあった。
「モーモーさんのお兄さんが、よくなりますように。起きたら飲んでね」と、書いてある。
俺の体には薄手のタオルケットが1枚掛けられていた。
「ーーーーー…」
体を起こして、辺りを見回す。
俺が寝ているのはソファ肘掛けを倒してベットにしたものらしく、足のところに肘掛らしき部分の名残が残っている。
すぐ横にキッチンがあり、ソファから少し離れた所にはテレビがあった。
どうやら俺は雨谷と愛が運転する車に乗り、車の中で寝てからずっとリビングで眠っていたらしい。
俺はテーブルの上のミネラルウォーターを飲んでから、雨谷を探す。
時計の針は0時を回ったところだった。
家に帰らなくては。
俺はソファから立ち上がりリビングを見渡す。
頭に軽い痛みを感じながら視線を移動させていくと、ひとつだけ明かりのついた部屋があった。
扉が少しだけ開いていて、俺は雨谷が中にいたら帰ると言わなければと思い、そっと隙間から中を覗いた。
「…ッ……!…光さん…
………今は……ダメ……」
色っぽい声に、思わず体が緊張した。
心臓が一気に速くなる。
扉の向こうで、雨谷が愛の首筋に、顔を埋めている。
「大丈夫だよ…
…真木大学の頃から、酔っ払って寝たら起きないから」
俺は扉を更に開けて、中を覗き込んだ。
愛は手を前にやり、雨谷の体を拒む。
「でもーーーッ……あッ……!」
雨谷の舌が、愛の首筋を這う。
見たくないのに、目が離せない。
愛の頬はほんのりと赤みが差し、その表情は雨谷を拒んでるのにも関わらず、いやらしい。
「ーー2人目…欲しいんだろ?
……声ちょっと我慢すればーー大丈夫だって」
雨谷は背中から、愛の服の中に手を入れる。
服が捲り上がり愛の白い肌が見えた瞬間、雨谷は愛をベットに押し倒した。
「……あッ…!……光さん…!
……待って…ッ…あぁッ…!」
言いかけた愛の声が、雨谷の指先一つで甘い嬌声に変わる。
自分の体が、熱くなるのが分かった。
最低だーーーこんなのーー
ーーー覗き見するなんて。
「声気をつけて…真木、起きるかもよ…」
雨谷はそう言って愛の服を脱がした。
愛の下着は淡いピンク色をしていて、花を模したレースがあらゆる所にちりばめられていた。
雨谷に身体中にキスをされ、その度愛は苦しげにベットの上で身を捩る。
苦しげなのにその表情はどこか恍惚としており、愛は遂に脚を開き、雨谷の背中に手を回す。
「…ッ…あ……!…ッ…あッ……
…ッ…ん…ッ…あぁッ!!!」
声を堪える愛は苦しげにシーツを握っていた。
愛が快感を堪える息遣いが、生々しく俺の耳に届く。
こんなの見てーーーどうする気だよーー
俺は自分に問いかける。
自分の下半身が、不本意に熱くなってくるのが分かった。
「…ッ…う………!…あッ…だめ……!」
愛の声の間隔が、だんだんと短くなっていく。
それは愛が、限界を迎える事を示唆していた。
世界で一番好きな女性が、自分以外の男に抱かれるのを見た人なんて、世界にどれくらいいるんだろう。
「ーーー愛……愛してるよ……」
「ーーーーッ…!…光さんッ…あ…あぁぁっ!」
雨谷が囁いた直後、愛は控えめな悲鳴をあげた。
充血した、潤んだ目で、雨谷を見つめる愛。
俺もその目を、どうか自分に向けてもらいたくなる。
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