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「そうそう!
真木柊一さん!!!
あの人すごい、カッコいいよね!!」
莉子もバターをつけた食パンを両手で持ちながら、目をキラキラさせている。
ーーー…ああいうタイプはやめといた方いいぞ…実際付き合ったら…色々と大変そうなのは目に見える…
「同じ学部だったけどーーー
頭も良いし、スポーツ万能だし……
ーーーー…いいヤツだとは思うよ…器用だし…
ーーーでも好きになるのはやめとけ。
ああいう人気者を好きになると、大変だから」
この時俺は、莉子に確かにそう忠告した。
でもそれは本気の忠告じゃあなくて、あんなに完璧で人気者の男を好きになったら大変だと言う事を伝えたかっただけだった。
もし本気で莉子が真木を好きになったとしたら、それは莉子の自由だし、口出しする事はないなとそう思っていた。
俺はそこまで思い返し、今度は莉子の財布を開いた。鞄を開ける時よりは落ち着いた手の震えで俺はレシートを数枚掴んだ。
「ーーーーー…」
絶句した。一瞬、何も考えられなかった。
財布の中からはラブホテルのレシートと、酒を買ったコンビニのレシート、更にもう一度鞄を見ると、横のポケットには真木が吸っていたのと同じ銘柄の煙草が入っていた。
この時俺は、自分が知っている真木柊一という男に疑念を持ち始める。
なんでもできて、いつも周りに人が集まってくる、華やかな真木柊一の裏の顔を知ってしまったような、そんな感覚に陥った。
莉子が死ぬ数週間前、莉子は真木と映画を見に行った。
それまで莉子は真木を含めた数人やグループで出かける事はあったが、真木と2人で出かける事になったのはその日が初めてだった。
俺にその日着て行く服とか、髪型について色々聞いてきたりもして、莉子は真木との映画をーーーデートを、すごく楽しみにしてるのは伝わってきた。
俺は自分の意見は参考にならないだろうなと思いながらも、莉子の相談に乗り、その日の朝は真木と出かける莉子を駅まで送ってから会社へ向かった。
そして仕事を終え帰宅するとその直ぐ後に莉子が帰ってきて、莉子は開口一番に「真木先輩、彼女はいないけど、好きな人がいるんだって」とため息をついたのだ。
それは俺が予想していた答えだった。
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