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それから数日、俺は珍しく莉子の落ち込んでる様子を目にした。 莉子はどうやらーーー振られたらしい。 俺はさりげなく莉子を気遣い、ビールを買いに行ったついでにコンビニで莉子の好きなアイスクリームを買ってきたり、夕飯に莉子の好きなグラタンを作って見たり莉子を元気づける様に努めた。 そうするとそれから1週間も経たないうちに、莉子はいつも通りの元気を取り戻し、真木の話なんかも普通にするようになった。 真木は莉子の中で、いわゆる「推し」のような存在になっていてーーー真木への気持ちは上手く消化できているのだなと、俺はそう思って疑わなかった。 でも、数週間後、莉子は自殺した。 俺が莉子が失恋から立ち直ったと思っていたのは、莉子の精一杯の気遣いで、本当は立ち直ってなんてなかったのだろうか。 もしかしたら真木からただ振られたのではなくてーーーこのレシートが示すように真木にもっと酷い事をされたんじゃないだろうか。 恐ろしい事にレシートの日付は、真木と莉子がデートをしたその日のものだった。 真木に唆されて酒を飲ませられ、酔っ払ったところでホテルに連れ込まれたーーー。 挙句の果てに強引に身体を求められたり、口止めの為に写真を撮られたりーーー或いは真木に同じように莉子に手を出すような…仲間がいたりしたとしたらーーーー? そこまで考えたら、真木への疑念が胃の奥から溢れ出す様に出てくる。夜中の1時を過ぎても一向に眠れそうに無く、居ても立っても居られない俺は外に出た。 立春とは本当に名ばかりで、空からは細かい雪が落ちてきていた。俺は薄手のパーカーだけお羽織り、車に乗り込む。 証拠なんて無い。 海に防犯カメラなんて無いし、周囲には争った形跡も足跡も何も無い。 警察は必要な捜査は全て終え、自殺以外は考えられないと言っていた。 もし真木が俺の予想通りの人間だとしても、証拠がなければ裁く事が出来ない。
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