氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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 月は急いで(あきら)の部屋へ向かった。  布団は畳まれ、片づけられていた。 「体調はいかがですか?」 「すまない。本当に、申し訳ないことをした」  麗の眉尻が下がっている。 「謝らないでください。わたしの願いは、もともと旦那様にゆっくりと休んでいただくことでしたから」  月は両手でしっかりと抱えていた、大きな花瓶を床へ置く。  大ぶりの花。茶色い花の周りを黄色い花びらが見事に彩っている。 「それは?」 「隣国の、向日葵という花です」  麗が寝ている間に、月は実家から一輪の花を取り寄せていた。  実際は畑で無数に咲き誇っているのだが、その大きさ故に一輪でもなかなか見応えがある。 「なかなかお出かけはできなくても、こうして、隣国のものを眺めたら……ふたりで旅行している気分になれるかな、と思いまして」  適度に距離を保ちつつ、月は麗へ話しかけた。 「月……」 「たくさん話をしましょう。これまでのことも、これからのことも」 「それならば、もっと近くに来ておくれ」 「えぇと、それは」 (照れるので) 「月」 「……はい」 (参りました。というか、最初から勝てたことはありませんが)
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