氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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「分かりました、好さん。一緒に行きましょう。そしてわたしは好さんを置き去りにします」 「おおお、置き去り?!」  月は好の手首を無理やり掴んだ。  そして勢いよく小鳥遊の席へ進み、好の後ろへまわると両肩へ手を置いた。 「小鳥遊さん、本日もご来店ありがとうございます」 「あああ、ありがとうございます」  つられるように好が口を開くも、既にしどろもどろだ。  小鳥遊が顔を上げて、好へ視線を合わせた。 (やっぱり、小鳥遊さんは好さんのことしか見ていない)  確信した月は言葉を続ける。 「本日のこの後のご予定はいかがですか? ちなみに、好さんはあと四半時(三十分)もすれば今日の仕事はおしまいです」 「そう、ですか」  ゆっくりと小鳥遊が口を開いた。 (初めて声を聞いたけれど、旦那様よりずっと低い声をしているのね)  小鳥遊が何か考えるように口元へ手を当てる。 「この後は取材が入っているのですが……」 「ですよね。売れっ子作家さんはお忙しいですよね!」 「取材後は空いています。よかったら、牛鍋屋にでも行きませんか」 「……はい」  重要任務、完了。
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