76人が本棚に入れています
本棚に追加
「分かりました、好さん。一緒に行きましょう。そしてわたしは好さんを置き去りにします」
「おおお、置き去り?!」
月は好の手首を無理やり掴んだ。
そして勢いよく小鳥遊の席へ進み、好の後ろへまわると両肩へ手を置いた。
「小鳥遊さん、本日もご来店ありがとうございます」
「あああ、ありがとうございます」
つられるように好が口を開くも、既にしどろもどろだ。
小鳥遊が顔を上げて、好へ視線を合わせた。
(やっぱり、小鳥遊さんは好さんのことしか見ていない)
確信した月は言葉を続ける。
「本日のこの後のご予定はいかがですか? ちなみに、好さんはあと四半時もすれば今日の仕事はおしまいです」
「そう、ですか」
ゆっくりと小鳥遊が口を開いた。
(初めて声を聞いたけれど、旦那様よりずっと低い声をしているのね)
小鳥遊が何か考えるように口元へ手を当てる。
「この後は取材が入っているのですが……」
「ですよね。売れっ子作家さんはお忙しいですよね!」
「取材後は空いています。よかったら、牛鍋屋にでも行きませんか」
「……はい」
重要任務、完了。
最初のコメントを投稿しよう!