氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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(しっかりとふたりだけの世界ができている。あとは詳細を詰めるだけね)  くるりと踵を返して、月は厨房へ戻る。  月が皿を洗いながら遠目に眺めていると、どうやらうまくいきそうな雰囲気に映った。 (よしよし。結果がどうだったかは、また次の出勤日に尋ねてみよう)  洗い終えた皿を清潔な布巾で磨き上げる。 (……お出かけ、か)  不意に手を止めてしまう。  麗は相変わらず多忙で、なんとか帰宅しても夕食後には出かけてしまう。 (いいなぁ。って、今わたしったら何を)  そもそもどうして月を婚約者として迎え入れたのか、まだ訊けていない。 (それなのに、出てきてしまっている、欲が。もっと一緒にいたいとか、もっと旦那様のことを知りたいとか……)  ふるふると首を横に振り、月は心のもやを晴らそうと努めた。 * 「久しぶりに丸一日休みを取れそうなんだ」  帰ってくるなり、(あきら)は顔を綻ばせた。 「何かしたいことはあるかい」 「ゆっくり休んでください」 「月、私が問うているのは、きみのやりたいことだよ? いや、正しくは、きみが私としたいことだ」
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