氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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(るゐさんは知っているんだろうか。旦那様が、わたしとの婚約を決めた理由を) 「……いえ、何でもありません。それにしても、旦那様は支度に手間どっていらっしゃるのでしょうか?」 「そうですね。ちょっと見てきます」 「あ、わたしも行きます」  玄関にいたふたりは、最奥にある麗の部屋へと向かう。  月は未だに麗の部屋へ入ったことはない。招かれることはあったものの、やんわりと断ってきたのだ。 (今日はるゐさんもいるから、いいよね)  ということで、月はるゐの後ろを静かについて行く。 「麗様、入ってよろしいですか?」  返事がない。月とるゐは、顔を見合わせて首を傾げた。 「麗様ー? 入りますよ。裸だったらごめんなさいね」  恐らく幼少期を知るるゐにしかできないことだろう。  一切の躊躇いなく、勢いよく襖を開ける。 「!」  そして、るゐは慌てて部屋へ飛び込んだ。 「旦那様っ」  麗は畳の上に倒れていた。息苦しそうに胸の辺りを押さえている。瞳は閉じたまま、眉間に皺が寄っていた。傍らには羽織が無造作に落ちている。  月もなりふり構ってはいられなかった。
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