氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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 入室して麗へ駆け寄り膝をつく。 「大丈夫ですか、麗様」  るゐが、失礼しますと言って麗の袖をまくった。 (えっ)  月は目を見開いた。  麗の腕の一部に、鱗のような模様が浮かび上がっていた。きらきらと静かな光を帯びている。 「ただの疲労ですね。布団を敷いて寝かせましょう。月様、手伝ってもらえますか」 「は、はい」  るゐは、一切動揺していない。  月は両手で頬を叩き、気を取り直す。 (ということは驚くべき事象ではない。しっかりするのよ、月)  立ち上がると、指示に従って布団を敷き、るゐを手伝って旦那様を寝かせた。 「水枕を持ってくるので、麗様を見ててください」 「はい、分かりました」  ばたばたとるゐが駆けて行く。  麗様は、苦しそうに時々体を動かしている。  やがてうっすらと瞳を開けると、月の姿を認識したようだった。 「……すまない」 「いえ、やはり今日は静養なさってください。お出かけはいつでもできますから」 「そうじゃない」  麗の声が僅かに掠れている。 「驚いただろう」 「と、いいますと」  鱗模様のことを指しているのは月にも理解できた。
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