氷屋へ嫁ぐことになりましたが、旦那様は冷たいどころか溺愛してきます。

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 木の実を拾おうと入った森は、地面がぬかるみ、空気もじっとりと湿っていた。  そこで月は遭遇した。  木の幹に結ばれて、途方に暮れているように見える蛇を。  薄水色の鱗が露に濡れて輝く、美しい蛇だった。 (これは、人間の悪戯? だとしたらひどすぎる)  月は昆虫や爬虫類を触ることに抵抗のない子どもだったため、何のためらいもなく解いてあげた。 「もう、人里に出てきちゃだめだよー」  逃がしてあげると、蛇は、月を何度も振り返りながら去って行った。  後でその話を両親へしたところ、蛇が毒を持っていて咬んできたらどうするつもりだったのだと叱られた。しかし、そのときは大丈夫だという確信が月にはあったのだ。 * 「……そうだ。子どもの頃は体が弱くて、度々あの姿になってしまっていた」 (つまり、この婚約は)  記憶と同時に、すとん、と腹落ちする。 (蛇ならぬ、龍の恩返し?)  まさかすぎる話ではあった。  しかし、月の推測を裏付けるように(あきら)は掠れた声で告げる。 「あのときから、ずっときみに恋している」  麗が腕を裏返した。
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