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先程まで朧んでいた月は鋭い輪郭を輝かせ、星は2人の頭上に近づき 天の川まで鮮明に見えているが、2人は美しい空には興味がない。
車内に常備しておいた懐中電灯を取り出し、足下や周囲を照らし始めた。間隔を開けて街灯が並ぶ遊歩道を進み、所々に生える木を見る。その中の、一際 太く大きな木の根元に2人は立った。枝振りも立派で 丈夫そうな その木を、くまなく照らして見入る。2人の背丈程の高さに樹液の出ている場所があり、そこに虫が集まっている。
「あっ、大きいのがいた。」
「ミヤマか、なかなか良い形だね。」
「甲虫もいた。」
他愛ない…なんてことのない遊びだが、彼らにとって 季節を楽しむ方法の1つである。
街灯と月に照らされながら散策をする帰り道。深呼吸をして「次は雨が降った後に来ようか。」と問いかけ、
「そうだね。」と返事をする。
2人は たくさん深呼吸をしてから車に乗って家路に向かった。
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