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「おめえ、今復讐って言ったか?」
「ええ。田辺さんは変だと思うかもしれませんが」
「ああ、正気じゃないな」
「でも現に僕の人生は奴らによって幾度となく台無しにされてきました。もう偶然とは言えるレベルじゃないんです」
「ほお。カニに人生をね。聞こうか」
「実は僕、これまで女性とお付き合いをしたことがないんですけど」
「へえそりゃかわいそうに」
「でもいい感じになった女性はいるんです。不思議なことに、彼女たちはみんな僕とのデートでカニを食べるんですよ。今日こそはって意気込んだ日に限って、ディナー先で彼女はカニを食べるんです」
「カニくらい食わせてやれよ」
「だめなんですよ。目の前で美味しそうに脚をちゅうちゅうされちゃったりすると、どうしても萎えちゃうんですよね」
「ふーん、で、他には?」
「パチンコで、海のキャラクターが出てくる機種あるじゃないですか」
「ああ、あのビキニ来た金髪姉ちゃんとか出てくるやつな」
「ええ。その機種を打っているとき、カニの図柄で当たりを引いたあとは必ずハマるんですよ。どんなに激アツな演出があっても絶対に外しちゃうんですよね」
「はは、そりゃたまたまじゃねえか」
「でも、こんなにカニ絡みのたまたまが続くなんておかしくないですか?」
不穏な佐久間を目の前に、まさか「カニたまだったらいいのにな」、という渾身のギャグは言えない。
「それに僕がカニに呪われている決定的な証拠があるんです」
「証拠だって?」
すると佐久間は前のめりになり、小声でこう言った。
「実は僕、かに座なんです」
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