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戦闘中は、魔力防御の状態を維持しながら戦うだけではない。その都度、モンスターや盗賊などの相手の弱点を考察しつつ、かつダンジョンにあった戦い方を考えなければいけないのだ。
それを、戦闘考察力、とか言うらしい。
その考察を組み立てるためには、ある程度以上の知識が必要不可欠である。冒険者の試験に、筆記試験があるのはこのためだ。ダンジョン、探索マナー、モンスターなどの知識に国と正しく取引するための社交性。それらをきちんと身に付けなければ、冒険者として仕事をしていくことはできないからである。
「け、剣士、黒騎士、白騎士……狩人、盗賊……竜騎士、獣使い、白魔導師、黒魔導師、赤魔導師……あ、あとなんだっけ。えっとえっと……召喚士、幻想士、詩人、剣闘士、拳銃使い、魔砲使い、海賊、それからそ、それから……あ、宝物使い!」
「正解!もっとすらすら言えるようになろうね。では質問その二。その宝物使いってどんなジョブ?」
「え?えっと……ダンジョンで見つかる宝物の中には、特殊な適正がないと扱えない特別な宝物がある。それを使って、特殊な攻撃をする専用のジョブ……あぶっ」
「正解だけど、大剣の先の魔力が消えてるよ。はい、やり直し」
「いいいい!」
びしっ!とハリセンがお尻に飛んできた。ちくしょー!とロークは転がる。
ちなみに剣士は一番ポピュラーなジョブだが、実際はその中でもさらに細分化されている。ロークのように大剣で戦うことを目的として訓練してきたタイプもいれば、二つの剣で戦う双剣使いタイプもいる。また、細身のレイピア系の剣に毒を塗って敵を攻撃するタイプの剣士もいるという。
ちなみに、黒騎士と白騎士は、剣士ジョブの派生である。どちらも剣士でありながら補助的に黒魔法を使うことができる者、あるいは白魔法を使える者を指す。黒騎士は、魔法剣士と呼ばれることもあるそうな。
「知識をちゃんと思い出して応用しつつ、体も動かせるようにならないと」
ちらり、と懐中時計を見て言うカナン。
「でもまあ、訓練始めた頃よりは全然良くはなってるよ。ちゃんと進歩してる。最初は魔力を全身に行き渡らせることもできなかったのが、ある程度維持した上で問題に答えられるようになってきたんだから」
「ありがと。……でも、完全に俺の訓練ばっかになってるけどいいのかよ。勉強は問題ないとしても、カナンの戦闘訓練が全然できてねーじゃん」
「俺は誰かさんと違って、日々ちゃんと鍛練してるからいいの。……人の心配してる場合?五分休んだらまた再開するからね。水分補給しておいで」
「ういー……」
季節は初夏。今日も結構蒸し暑い。訓練も大事だが、健康管理はそれ以上に大事だ。よろよろと立ち上がり、その際うっかり訓練場の柵に激突して一本へし折りながら(いやほんとごめんなさい)自分の荷物を置いたベンチへ向かう。
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