1「超怪力スキルをお望みですね?わかりましたー」

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 はっきり言って、このままでは日常生活もままならない。確かにモンスターと戦えば、それなりの戦闘能力を発揮できるかもしれないが。 「戦場に行けばこの力だって役に立つ、とか思ってないよね?」  ジト目になって言うカナン。 「その拳の包帯が証拠でしょ。……筋力に、体の耐久力が追い付いてないよ。その拳で敵を殴ったら、敵を吹っ飛ばすのと引き換えに気味の腕が折れる可能性が高い」 「や、やっぱりそうだよな……なんとかならねえのか、これ」 「ならない。君が、その力を制御する方法と……その力に見合うくらいまで、体をきちんと鍛えるまではね」 「あああああ……」  なんてこった。ロークは項垂れるしかなかった。最強無敵のチートスキルを手に入れれば、努力なんかしなくても最強の冒険者になれるとばかり思っていたのに、まさかこんなことになるなんて。これでは、冒険者として旅立つ以前の問題である。――今年こそ共に試験に合格し、冒険者として旅立とうとカナンとは約束していたというのに。 「努力もしないで、楽してチートスキルなんか得ようとするからバチが当たるんだよ」  ぺしり、とそんなロークの頭をはたいてカナンは言った。 「仕方ないから、訓練につきあってやる。そのまま村中のモノを破壊して回られたらたまったもんじゃないからね」 「か、カナン……!」 「ちょ、抱きつくなよ!?今のお前のパワーで抱きつかれたら俺の体が砕けるから!!」  飛びつこうとした俺の体を回避してカナンが叫ぶ。代わりに、俺がうっかり手をついた地面にドッカンと大穴があいたわけだが。 「元々お前は体格的にも剣士向きだし、魔法は俺の方が得意だからね。……そのパワーを振るっても体が壊れないような、そんな防御魔法を一緒に考えてやるよ。良かったね、俺みたいな親友がいて!」 「……ほんとにな」  ややツンデレ気味に言う少年に、俺も笑ったのだった。  オズマだった時と、大きく違うこと。それは単純にチートスキルを得たことだけではない。  こうして真摯に相談に乗ってくれる親友が、身近にいるということでもあったのだった。
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