2「この剣が手に入れば、俺もこのパワーを最大限発揮して戦えるかもしれないってことか!」

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 ただし。 「……今度女神様にチート能力お願いする時は、もうちょっとバランスよく強くして貰うことにする……」 「馬鹿、そういうことじゃないだろ」  ポカッ!とカナンに頭を殴られるローク。現在、自分達はロークの家の庭にいるという状況である。ロークの“怪力”がどれくらいのものなのか、そして魔法のサポートを使って制御が可能かどうかを調べている真っ最中というわけだった。  ロークが前世の記憶を思い出してから、二週間。訓練を続けているものの、このスキルの想像以上の面倒くささに大苦戦しているところである。  確かに、凄まじいパワーなのは間違いないのだ。重たい馬車を押すこともかるがると出来るし、薪だってあっさり持ち上がる。地面に向けてパンチをすれば大穴もあくし、本気で打てば確実にかなりのクレーターができるだろうということは想像に難くない。  問題はカナンが言った通り、そのパワーに対してロークの体と、扱う道具の耐久性がまったく追いついていないことである。  薪割りをしようとして斧を振り下ろすと、土台の切株まで真っ二つになった――のみならず、斧が砕けて使い物にならなくなってしまうのだ。  地面にパンチで穴を開けた時は、自分の指の骨に罅が入った。回復魔法を使えるカナンが傍にいなかったら大騒ぎになっていたところである。 「日常生活の力のセーブは……ものすごーく気を付けていればなんとかなりそうってわかってきたけどさ」  この二週間で椅子やら床やら柱やら屋根やらと壊しまくったロークは、しょんぼりボイスで言う。心穏やかに、なるべく怒らず、かつ一つ一つの動作を慎重に。そういうことを気を付けていればある程度生活できるようになってきたところだ。――時々それを忘れてしまうのが問題であるし、正直かなりストレスではあるのだが。 「問題は、このままじゃ冒険者になるどころじゃねえってことだよな……」 「それ。……冒険者の試験は来月だ。まずはそれを乗り切らないといけないんだけど。……今のお前が拳で戦うのは自分の体がもたない、ってのはわかってるよな?」 「うん……」  そもそも、ロークは剣士志望者だ。大剣を使って敵をばったばったとなぎ倒す、のが昔からの夢であったのである。ゆえに、ずっと剣の訓練ばかりをしてきたわけで、今更ジョブチェンジなどできるはずがないのだ。  ちなみに、前世の記憶が蘇るまでは数回振るだけで息が上がっていた一番重い大剣。今では苦も無く振り回せるようになっている。  ただし――これで敵を殴ったら最後、多分剣の方がソッコーで折れるだろうなということがわかっているので使うに使えないというだけで。 「これは俺の提案なんだけどさ、ローク」  彼は自分の肩掛け鞄から、分厚い本を取り出した。
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