2「この剣が手に入れば、俺もこのパワーを最大限発揮して戦えるかもしれないってことか!」

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「とりあえず次の冒険者試験は、現存の武器で一番頑丈なやつを魔力で防御することで乗り切ろう。筆記試験の勉強と並行して、武器の魔力強化の訓練だね。最悪俺がロークの武器を防御してどうにかするけど、正直それは最終手段だってのは覚えておいて。理由はわかるね?」 「それやったら最後、カナンが他に何もできなくなるんだろ……」 「正解。多分今の俺のスキルじゃ、他の補助魔法も攻撃魔法も回復魔法も手が回らなくなる。長い目で見てそれはまずい。二人だけのパーティなんだから尚更だ」 「うん……」  本当に、カナンには迷惑かけっぱなしで申し訳なくなる。ロークは元々、魔力を操作してどうこうするのが壊滅的に下手だ。そのせいで、魔法系の訓練を全部投げ捨てて剣士の特訓ばかりしてきたのだから。  しかも、筆記試験の問題もある。学校でも成績優秀なカナンと違い、ロークは頭を使うのも大の苦手だった。試験勉強でも、彼におんぶにだっこになるのは既に目に見えている(ああ、これでも前世では一度突破したはずなのに!)。しょんぼりと肩を落とすロークに、“それで”とカナンが本のページを開いて言った。 「そんなにしょげるなんて。確かに暫くは苦労するだろうけど、朗報もあるんだ。……これ、過去に見つかった“宝物(ほうもつ)辞典”なんだけどさ。これに、どれほどの衝撃を受けても絶対折れない剣ってのが載ってるんだ。名付けて、“カコリアの聖剣”」  ほら、と彼はそこに載った写真を指差す。それは、柄から刃までが銀色に輝く、不思議な大剣だった。柄の中心には青い宝石のようなものが嵌っている。長さは、なんと刃の部分だけで2メートルを超えるという。 「白の遺跡に眠っているとされる聖剣で、普段はこの刃の部分が全部柄の中に引っ込んで収納できるらしい」 「え!?ど、どうやってだよ、こんな巨大な刃!」 「それがわからないから不思議なんだって。ただ、柄の部分だけでも結構な重さになる上、刃を顕現させたらその重さは70キロを下らないと言われている。つまり、持ち帰るだけでも本来一苦労なんだ。そして、どれだけ乱暴に扱っても傷一つつかない。最初にこの剣を持ち帰った探検隊が、うっかり地上から地下十階の高さまで剣を落としてしまって、慌ててもう一度回収しにいったなんてことがあったらしいんだけど……落ちたはずの剣はピカピカのまま、まったくの無傷だったっていうんだ」 「すげえ……!」  ロークは眼を輝かせて、辞典に載った概要文を読む。確かに、十階の高さを落ちても傷がつかないくらい頑丈な剣ならば、自分が使っても壊れずに済みそうだ。
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