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午後7時。失意の中早めの帰宅を果たした私を、兄は朝と同じ姿勢のままソファの上で出迎えた。
「おかえり。晩御飯、いるだろ?」
「……うん」
「冷蔵庫に朝飯残ってる。あと、俺の晩御飯の残りもあるから、足りなかったら食べな」
「……ありがと」
まるで撃沈してくることが分かっていたかのような対応は気に触るが、料理する気力も無い今の状態では感謝するほかない。
もくもくと夕食を済ませ、風呂に入り、さっさと自室にこもる。ベッドに仰向けになり、ボーッと天井を見つめる。
誠実そうな人だった。オシャレな服を着こなし、顔も悪くなく、職も安定しているようだった。
ただ、音楽の趣味だけが合わなかった。
その一点が全てをぶち壊した。
何か酷い価値観のズレがあるような。根本的に相容れない存在のような。そんな気がして怖くなった。
実際、話していても微妙に噛み合わなかったし、相性バッチリでなかったのは本当だろうけど。
はぁ、と溜め息をこぼしつつ惰性でアプリを開く。
こんなんじゃ彼氏なんてできるわけないと思いつつ、微かな希望に縋るように検索をかけるのはもはや習慣になってしまっていた。
ザッとプロフィールを流し見して回っている時、その人を見つけた。
思わずベッドから飛び起き、ケータイを両手で持ち直す。何度も文面に目を滑らせる。
そこには間違いなく、こう書かれていた。
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