神無仏無な世界で、カズと出会う

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 ここ数日、カズこと兄と連絡を取り続けている。  話題はもちろん音楽について。 「神無仏無で特に好きな曲ってありますか?」 「うーん。選ぶのが難しいけど『一射入魂少女(キューピッド)』、『Dive to Shallow River』、『初デートは激辛カレーで』なんかは特に好きかな」 「えっ、センス良過ぎですか!?」  日に日に距離を詰め、作戦は順調だと口の端を吊り上げる。 「本当にとことん合いますね、僕たち。りぃさんを知らずに過ごしてきた今までの人生、なんか勿体なく感じちゃいます」  ぷくく! 残念でした! 生まれた時から知ってる妹だよーん! と内心嘲笑いつつ、そんな感情はおくびにも文面に出さぬよう注意を払い、返信を考える。 「『マッスル・コミュニケーション』の『愛はまるで大腿四頭筋』って歌詞、どういう意味だと思います?」 「大腿四頭筋のように、愛は人体の中で最も大きな割合を占める部位で、あらゆる行為の原動力になるってことだと僕は思ってます」 「あ、その解釈すっごくイイ」  日頃の恨みを忘れ純粋に感心してしまった。  時刻は午前1時半。明日も仕事だというのにケータイを持つ手が離せない。  壁一枚隔てた隣の部屋で兄も今同じようにケータイと睨めっこしてるのかと思うと、なんだかくすぐったい感じがした。
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