0か?1か?

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0か?1か?

そうして、アキラとの最初で最後のデートは終わった。今日一日、私は見知らぬ男性と一緒にここエブリスタ遊園地で遊んだ。 『じゃあ、これで』 「うん、楽しかった。時間を作ってくれてありがとう」 『こちらこそ。まるでほんとに隣にいるみたいで楽しかったよ』 「じゃあ、さようなら」 『お元気で』 そっとスマホを閉じて、家へと帰る。 アキラとSNSでお互いのことを話していくうちに、それぞれ気づいたことがあった。それは、いかにそれぞれのパートナーを愛しているかということだった。仕返しに誰かと浮気するなんてできない、けれどこのままでは気持ちが収まらない。そこで考えたのが、架空のデートだった。メッセージで会話をしながら、あたかもそこにいてデートをしている気分になるというもの。 周りから見たら、普通の中年女が1人で遊園地で遊んでいるように見えただろう。それはきっと、アキラも同じで1人の男が遊園地で遊んでいるように見えただろう。 チケット売り場でも、きっとあの場所にアキラはいた。けれど探さないことが始めからの約束だった。同じように行動するけど、周りを確認したりはしないこと。 1度でも会ってしまうとそれはもう、浮気だ。でも会ってもいないならそれは浮気にはならないんじゃないかという、こじつけみたいなものなのだ。 浮気されたモノ同士が決めた、その場だけのルールなのだ。 0には何を掛けても0、でも1は違う。浮気をせずに、浮気をした気分だけを味わってみたかった。屁理屈と言われてもいい、それで自分たちが納得したのだから。 要するになんでもよかったのだ、ストレス発散になれば。 まだ私は夫を裏切ってはいないけれど、ひとまず気持ちは落ち着いた。あとはこれ以上あの桃子という女がでしゃばらないことを祈るだけだ。架空のデートで解消しきれないほどのストレスを抱えてしまったら、私は夫に何をするかわからないと思う。 今は、なんとか小さくなった嫉妬の炎が再び燃え盛らないことを、願うだけだ。 ーーーおしまいーーー
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