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復讐を。
私と夫は、会社の同僚だった。3才年上の、優しい人だった。穏やかな人で、いつも私を大切に扱ってくれて、私は幸せな結婚をした……そう思っていた。
「今日も遅くなると思うから、先に寝てていいからね」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃうね」
___そっか、今日も…
近頃増えた残業という名の、夫の自由時間。
私たちには中学生と小学生の子どもが2人いる。私は、子どもたちが手を離れた頃から、近所のコンビニでアルバイトを始めた。たまに夕方から夜遅くまでのシフトの時もあって、その日はだいたい夫は残業なのだ。
仕事中の私は夫の残業など詮索する暇もなく、子どもたちはそれぞれ勝手に過ごしている。その時間、夫がどこで何をしていても、家族の誰も気にもとめない。ましてや残業だと言われていたら。
そんな夫の残業に疑いを持ったのは、ある夜の、夫のスマホに連続でメッセージが届いたからだった。私は寝ていると思ったのだろうか。スマホのロックは外されていて、メッセージの中身が画面に流れていた。その時、夫はシャワーを浴びていて、私は、そっと夫のスマホを見た。
『もう帰り着いたかな?今日もありがと❤️』
『会えるとうれしいけど、帰っちゃうとさびしいな』
『和樹くん、私のこと、愛してる?ねぇ、奥さんよりも?言ってよ』
『ねぇってば!』
『次はいつ、会えるの?桃子は和樹君のモノだからね!おぼえておいてね』
『もう、寝ちゃうよ。今夜も激しかったからもう眠い。おやすみなさーい』
読み進めるうちに、ムカムカとしてきた。
___残業って、そういうことだったの?!
嘘をついて、女に会いに行ってそして…!!
頭の中に、見知らぬ女と夫の和樹が激しくもつれあう情景が浮かんだ。
ガチャっと音がして、寝室に入ってくる夫。私は息を殺して、寝たふりをした。
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