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SNS
いつからだろうか?
ずっと騙されていたのだろうか?
昨夜見てしまったメッセージを思い出して、吐き気までしてくる。何がそんなに不快なのか、考えてみるけどわからない。
___騙されていたこと?
___知らない女を抱いたこと?
___愛してると私以外の女に言ったこと?
___結局は嫉妬してるということ?
ずっともやもやする。子どもたちの手前、無理矢理平静を装ってるけど、うまく笑えなくなってきてる。いっそのこと、問い詰めて白状させて、相手の女から慰謝料でも取れば気持ちは収まるのだろうか?
こんなことを相談できる友達も思い当たらず、サイトの相談コーナーを見る。
___やり返す?
家族のため、妻のために使うはずのお金と時間を他の女に使う男に、思い知らせるためには復讐が一番効果的だ。やり方は簡単、浮気をすればいいのだ、なんてことが書いてある。
私が誰かと不倫?いや、浮気?違いがわからないけどそれをしろと?
けれどそんな相手もいなくて、何の気なしにSNSを流し見する。いろんな人がいろんな呟きをしていて。
「あ、いるじゃん!」
妻に浮気された男性が、心境をつぶやいているものがあった。私と似ていた。妻が浮気をしているらしい事実はあるのに、それを追及できないまま、もんもんと悩んでるという。
___話が合うかも?
単純に、話がしたかった。同じ心境の人がたまたま男性だっただけで、相手は誰でもよかったのかもしれない。
DMを送って、それぞれの事情を話す。顔も名前も、素性が一切わからない人だから、思っていることをどんどん話せた。
スマホに届いたメッセージを読んでしまってからずっと心が苦しいことや、問い詰めたいけど冷静に判断できる自信がないこと、子どもがいるから不仲なところは見せたくないこと、それでもこのまま見て見ぬフリを続けるのは心が壊れてしまいそうだということ。
思っていることを洗いざらい、DMで語り尽くした。それは、その日だけではなく、時間があればどちらからともなく、同じ痛みを知ったモノ同士で慰め合っているかのようだった。
『不思議ですね。ずっと前からの友達のような気がしてきました』
アキラという名前のその人が言う。
「そう言われてみれば、私もそんな気がしてきました」
SNSでは、ナオと名乗っている。
『どうします?気持ちを収めるために、復讐ってやつをしてみますか?』
アキラからの申し出に、戸惑ってしまう。
「でも、それじゃあ…」
『わかってますよ。だから、こうしましょう』
そんなことから、ここエブリスタ遊園地でデートをすることになった。
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