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レストランデネブに着いた。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?あ、空いてるお席へどうぞ」
窓際の園内が広く見渡せる席に座った。
「なんにする?」
『入り口のところに書いてあったからハンバーグ』
「じゃあ私もそれにしよ。あ、ねえねえ、ここ花火大会があるみたいだよ」
『あ、ほんとだ。せっかくだから見ていこうよ』
「そうだね、そうしよう」
今日は遅番の仕事だと、家族には言ってあるし晩御飯の準備も済ませてきた。主婦は浮気するのも楽じゃないなと思う。
『うまかった!さすがオススメだけのことはある』
「うん、美味しかった。じゃあ、花火大会までゆっくり過ごそうか?」
『そうだね、まだアトラクションも残ってるし。あ、そうそう、花火を高いところから見ることができるらしいよ、買っとく?観覧車のチケット』
「まだ残ってるかな?」
『買ってくるよ』
「私も行く」
チケットは買えた。それからは暗くなるまでゆっくり遊んだ。初めてのデートなのにそんな感じはしないくらい、気を許せた。
だんだん暗くなって、花火大会のアナウンスが流れた。観覧車のチケットの番号も呼ばれる。
「行きますか」
『そうだね、行こう。足元、ちょっと見えないから気をつけて』
「ありがとう」
花火大会が始まってすぐ、観覧車の順番がきた。チケットを渡すと係員の人が不思議そうな顔をした。
『おおっ!いくらか花火に近いね。こんな距離で見るのは初めてかも』
「そうだね。アキラは花火大会ってよく行くの?」
『最近は行ってなかった気がするな…忙しくて』
「私も…忙しいって言い訳してたかもしれないけど」
『僕もそうかも…今年は行こうかな?あっ!今の綺麗だった、真ん中の色がよかった』
「え?私からは見えなかったよ、残念…私も今年はみんなで行こうと思う」
『そうか、いい花火大会になるといいね』
「お互いにね」
ゆっくりと回る観覧車から見た花火は、今までに見た花火とはまた違って見えた。この景色を忘れないでおこうと思った。
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